社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!
※このページに書いてある内容は取材日(2008年11月06日)時点のものです
航空整備士(せいびし)の仕事は,飛行機を点検(てんけん)し,お客様の安全を守る仕事です。フライトの前に毎回点検(てんけん)する「ライン整備(せいび)」はもちろん,飛行回数や飛行時間に応(おう)じて点検(てんけん)する「ドック整備(せいび)」も行っています。飛行機の点検(てんけん)には多くの知識(ちしき)と技術(ぎじゅつ)が必要なので,ライン整備(せいび)を担当(たんとう)する人,ドック整備(せいび)を担当(たんとう)する人,エンジンが専門(せんもん)の人,コンポーネント(整備(せいび)品)が専門(せんもん)の人,というようにそれぞれの専門(せんもん)分野の知識(ちしき)と技術(ぎじゅつ)を持った航空整備士(せいびし)が協力して点検(てんけん)・整備(せいび)を行っています。また,いくつもの飛行機を整備(せいび)するためのスケジュールを考える人,飛行機を製造(せいぞう)したメーカーに問合せをする人,トラブルの原因(げんいん)を調べ,対策(たいさく)を考える人も活躍(かつやく)しています。私(わたし)は,以前はドック整備(せいび),現在(げんざい)はテクニカルサポートというチームに所属(しょぞく)して仕事をしています。
ドック整備(せいび)には,一晩(ひとばん)かけて行う「A整備(せいび)」,1週間くらいかけて行う「C整備(せいび)」,5年に1回くらい行う「HMV」という3種類の整備(せいび)があります。私(わたし)が4月まで担当(たんとう)していた「C整備(せいび)」は幅(はば)230m,高さ42m,奥行(おくゆ)き100mもある大きな格納庫(かくのうこ)に,飛行機を後ろ向きに入れて行います。使用期限(きげん)が切れる部品やエンジンオイルを交換(こうかん)したり,錆(さ)びたり弱っている部品がないかを調べたり,錆(さ)び止めを塗(ぬ)り直したりもします。また飛行機には,万が一飛んでいる間に故障(こしょう)が起きた時に動く予備(よび)の装置(そうち)が存在(そんざい)します。この装置(そうち)は普段(ふだん)使われないので,C整備(せいび)の時にはこうした装置(そうち)がきちんと動くかどうかも点検(てんけん)します。20~30人くらいの整備士(せいびし)で1機の整備(せいび)を行うのですが,C整備(せいび)を完了(かんりょう)するまでに毎日早番の整備士(せいびし)が朝7時50分から,遅番(おそばん)の整備士(せいびし)が夜11時30分まで整備(せいび)を行い,5日から1週間くらいの期間がかかるんですよ。
航空整備士(せいびし)には様々(さまざま)な知識(ちしき)や技術(ぎじゅつ),資格(しかく)が必要です。例えば,飛行機の金属(きんぞく)部分が錆(さ)びていないかを点検(てんけん)する場合も,目で見て膨(ふく)らんでいないか確認(かくにん)する,叩(たた)いて音を聞いて確認(かくにん)する,飛行機にクラック(亀裂(きれつ))がないかを点検(てんけん)する場合にも,目で確認(かくにん)する,超音波(ちょうおんぱ)を使う,X線を使う,など様々(さまざま)な方法があります。こうした方法1つ1つで使う機械・技術(ぎじゅつ)が異(こと)なり,それらの点検(てんけん)を行うための様々(さまざま)な資格(しかく)が存在(そんざい)します。航空整備士(せいびし)はこうした資格(しかく)を取るために日々(ひび)勉強しているのです。他にも,高所作業車やフォークリフト,クレーンを運転するための資格(しかく),有機溶剤(ようざい)を使う為(ため)の資格(しかく),飛行場の中で車を運転するための資格(しかく)などもあるんですよ。
私(わたし)が現在(げんざい)所属(しょぞく)しているテクニカルサポートチームは,4つの分野のそれぞれのスペシャリストが集まった6人のチームで,救急救命士のような役割(やくわり)のチームです。点検(てんけん)・整備(せいび)の際(さい)に,どうしても故障(こしょう)の原因(げんいん)が分からないこともあります。そんな時に,航空整備士(せいびし)からの相談に乗ったり,故障(こしょう)して飛ぶことが出来ない飛行機の修理(しゅうり)に当たったりするのが私(わたし)の仕事です。ですから,テクニカルサポートチームは,朝でも夜でも,平日でも休日でも,大きなトラブルが発生したときには海外の空港にだってすぐに駆(か)けつけます。原因(げんいん)がなかなか分からず,複雑(ふくざつ)な部品の設計図(せっけいず)を見ながら「何が原因(げんいん)なんだろう」と考え込(こ)む時もありますが,故障(こしょう)の原因(げんいん)を突(つ)き止めた時には,まるで難(むずか)しいパズルを解(と)いた後のような嬉(うれ)しさがあるんですよ。
飛行機は点検(てんけん)が終わればお客様を乗せて飛び立つわけですから,整備(せいび)が予定よりも遅(おく)れると大変です。エンジンの交換(こうかん)は10人くらいのチームで行うのですが,熟練(じゅくれん)したチームでは一人一人がてきぱきと自分の役割(やくわり)をこなし,ピタッと息が合って,短時間で作業を終えることができます。こうした時には,チームで行うスポーツを終えた時のような達成感がありますね。
航空整備士(せいびし)の仕事で一番大切なことは,誠実(せいじつ)であること,うそをつかないことだと私(わたし)は考えています。例えば,自分が忙(いそが)しい時に,整備場(せいびじょう)の床(ゆか)に油がこぼれているのがたまたま目に入ったとしましょう。自分が忙(いそが)しいからと言って「油には気が付かなかったことにしよう」と自分にうそをついてしまったら,どうなるでしょうか。別の人が転んで大きな事故(じこ)を起こしてしまうかもしれません。航空整備士(せいびし)の仕事は,飛行機に乗るお客様の安全を守る仕事です。どんなに良い技術(ぎじゅつ)を持っていたとしても,誠実(せいじつ)さを持っていなければお客様の安全を守ることができなくなってしまうのです。
私(わたし)は大学では,理系(りけい)の研究室で勉強をしていたので,そこで学んだことを活かせる仕事に就(つ)きたいと思っていました。でも,子どもの頃(ころ)からずっとスポーツをやっていたので,コンピューターだけに向かう仕事よりも,体を使ってできる仕事がしたいと思ったのです。そこで,空港という最先端(さいせんたん)の技術(ぎじゅつ)が集まる場所で,体も使うこともできる航空整備士(せいびし)の仕事に就(つ)こうと思ったのです。
私(わたし)は子どもの頃(ころ)は運動が大好きで,少年野球とサッカーばかりしていました。小学校が終わると,特に約束をしたわけでもないのに,友達と集まって日が暮(く)れるまで原っぱでサッカー。小学校の頃(ころ)に転校をしたことがあるのですが,転校先に少年野球チームがなかったので,自分で声をかけてまわって野球チームを作ってしまったくらいです。中学校に入るとバレーボールを始めて,大学を出るまでずっと続けていたんですよ。
最近は「将来(しょうらい)こうなりたい!」という夢(ゆめ)を持っている人が多くて,それはとても素晴(すば)らしいことだと思います。でも,だからと言って自分の夢(ゆめ)と関係なさそうに思えることに興味(きょうみ)を持たないのはもったいない。自分の夢(ゆめ)とは関係が薄(うす)くても,まずは取り組んでみることで,新しい興味(きょうみ)が沸(わ)くかもしれません。自分の将来(しょうらい)には,今の自分では気づかない色々(いろいろ)な可能(かのう)性(せい)があるので,自分の夢(ゆめ)や興味(きょうみ)から外れることでも積極的に取り組んで欲(ほ)しいですね。